Art on Paper NY 2022に出展しました

更新日:10月10日


ニューヨークで開催されたアートフェア Art on Paper 2022より先日帰国いたしました。

コロナ後、世界はオンラインで容易く繋がりその恩恵を享受してきましたが、やはりフィジカルでの出会い、現場で体感できるものはプライスレスだと再認識しました。


そして4年ぶりのニューヨークはローテクな地下鉄、街の喧騒、匂い、何より人の優しさはまったく変わっていなかったです。(物価だけがとんでもなく高騰していました。)

アートフェアの様子、ニューヨークのアートシーンを纏めましたので是非ご一読ください。


Art On Paper NY 2022 出展報告


アート最先端の街、ニューヨークでは毎年数々のアートフェアが開催される。

「アートオンペーパー」はそのうちのひとつで紙を素材とした作品のみを扱うとてもユニークなフェアとして2015年にスタートしたばかりのまだ比較的新しいものではあるが出展ギャラリー数はすでに100に達し、来場者数ともに順調に伸びているアートフェアである。

Akira Art Roomは今回ご縁がありGallery G-77と共同出展という形でこのアートフェアに初参加した。

歴史的な円安に加え、ニューヨークのアートフェアということで参加費用もかなり高額であったため悩んだが世界のアート需要の約5割を占めるアメリカの、中でも最先端を行くニューヨークのアートに対する熱量を肌で感じたかったことと、以前よりご縁の深い台湾の友人の繋がりで和紙を使った美しいアートを生み出す女性アーティストを紹介され、アートオンペーパーのコンセプトと重なることが参加の決め手となった。


会場はpier36というロウアーイーストサイドのピア沿いにある巨大な展示場。

交通の便は決して良いとは言えないがそれでも9月8日~11日までの期間中多くの来場者があった。

最終日の11日のみ、雨模様であったがそれ以外は清々しい秋晴れに恵まれた。

Gallery G-77のブース

向かって右側の一面がAkira Art Roomによる台湾人作家、謝淑慧の作品展示風景。


アートフェアには学生からご年配の方まで友人同士、恋人同士、ご家族連れ、もちろんお一人で真剣にアートを観に来られる方など、来場者の層は様々だが共通していることは皆さまアートに対する好奇心がとても高いということ!










日本から和紙で鶴を折ってオリジナルで作ったブックマークに貼り付けた思いつきで生まれたハンドメイドのノベルティ。これがニューヨーカーに大変受けて初日に飛ぶようになくなった。日本の折り紙技術は世界に誇れる文化なのだと嬉しい驚きであった。

表にはアーティスト謝のメッセージ、“Be more sensual and less rational to see my works.”を印字した。”もっと自由にあなたの感性に従って私の作品を観てください。“



写真ではなかなか伝わらないのが残念であるが謝の作品は表面に銀箔を施し、所々にちぎり絵技法も用い、非常に繊細な作りとなっている。

またミネラルペイントを用いて光に反射すると表面がキラキラとまるでダイヤモンドをちりばめているかのような輝きを放ち、その輝きは光の差し込む角度によっても変わるので「アメージング」「ビューティフル」などのお声をたくさん頂戴した。こちらでは皆、思ったことを声に出して表現する。

そんな中で印象的だったことが「subtle」という表現を多く聞いたこと。

普段あまり馴染みのない言葉だったため恥ずかしながらこの単語の意味を正確に知らずあとで調べたら「繊細」という意味だと分かりニューヨーカーに謝の繊細な技法が伝わっているのかと思うと嬉しくなった。


たくさんの方に観ていただき多くのお褒めの言葉は頂戴したが販売となるとまた別の話しでこちらはなかなか苦戦を強いられたのも事実であった。

要因は何かと考えながら会場を回り他のブースの展示作品を観ながら感じたことは謝の作品は明らかにアジア色が強すぎるため飾る場所を限定させてしまうこと、全体的に奇をてらわないプレディクタブルな構成なので観る側にいくつもの解釈を促すものではないこと、観る側の感情や精神を揺さぶるインパクトに欠けていたことなどが挙げられるのではないかと様々な人に意見を聞きながら自分なりに分析した。

もちろん「subtle」という表現が示すように謝の繊細な世界観は十分に伝わっているという手応えは感じたが目の肥えたニューヨーカーにはそれ以上に心揺さぶられるものが必要だったのだろう。私の力不足で作家の思いを十分に伝えきれなかったことも大きい。

繊細で且つ強烈なインパクトを受けるアートとは。

アートに限らずそれなりの高額商品を購入する決め手となるのは出会った瞬間の強烈な衝撃だったり、正体不明の磁力のようなものが生まれるか否かなのだと思う。

そして即決に至らずともそのとき生まれた感情が鮮やかに瑞々しいままで人々の記憶に残るなら時間は掛かっても必ずふさわしいタイミングでご縁がやってくるものだ。

世の中は数多の魅力的なもので溢れており、その中から選ばれる一枚とは何か?と常に問いながらその問いにしっかり応えられる一枚を世に送り出したいと改めて感じたのだった。

                     

実は謝の作品を最初に観て非常に印象に残ったものがこちらの一枚だった。

本来はこのシリーズの作品を今回ニューヨークに持ってきたかったが紙ベースの作品ではないのでArt on Paperのコンセプトとずれてしまうことと、大きすぎて輸送コストが非常にかかってしまうため断念したがipadでこのシリーズの作品を観てもらうと実はこちらのほうが人気が高くニューヨーカーの関心をより惹きつけた。

ただし、一辺が150cm以上する大型作品になるためこのようなシリーズをニューヨークで展示しようと思ったらやはり現地に受け入れの協力者がいないと難く、そのあたりのネットワーク構築から始めていかねばならない。課題は多く、色々考えるとぞっとするがそれ以上にニューヨーカーのアートに対する熱量はエキサイティングでありもう少しこの市場で挑戦させていただきたいと思うのだった。

そんなわけでニューヨーク初参戦はほろ苦デビューであったがそれでも今後の素敵なご縁に繋がりそうなお話しも頂いた。

ひとつは全米で展開している病院のグループ傘下でアートキュレーション部門のディレクターが謝の作品が入院患者の癒やしとなるにぴったりであると、今回は持っていかなかった大型アートの引き合いをいただいている。病院の大きな空間に映える作品を探しているとのこと。

後で教えていただいたサイトを拝見するととても大きな組織で病院がアートキュレーション部門を自前で備えているのが何ともアメリカだなと感じた。日本にもこのような類の組識はあるのだろうか?

謝の大作がアメリカの病院に飾られて入院患者やその家族のオアシス的な存在になればと勝手に想像は膨らむばかりだ。

あとは個人のお客様からも何点か真剣にご検討いただいているものもあり、フェアが終わってからもこれらのご縁を大切に育んでいきたいと心している。

作家が良いと思って描いた絵が他人にとっても良い絵になる。こうして絵を共有する人が二人、三人になって点から線へ、線から面へと広がることが原始的なマーケットの仕組みだとしたら今の立ち位置はその夜明け前。

ワクワクしながらその広がりを体感すべく精進したいと思う。


番外編

◆ チェルシーのギャラリー街より

アートフェアが終わってNY滞在最終日にチェルシーのギャラリー街を訪ねた。

元は倉庫街だったエリアが再開発され全米、あるいは世界的にも知られている著名なギャラリーが密集する地域。

薄汚い倉庫街で実は超高額な美術品を扱うギャラリー街というのは分かっていても中々ミステリアスな世界なのだった。

空間の使い方がなんとも贅沢でどのギャラリーもとにかく圧倒されるプレゼンテーション。


倉庫を利用して作っているギャラリーなので構えはこのような感じであるがこの扉の向こうにはとんでもない世界が広がっている!アートの原理はおよそ不可解でミステリアスなもの。でもそういうものが世の中に少しくらいあってもいんじゃないかなとも思うのだ。

市場がある種の合理性で動いていると思われているなかでよく分からないロジックで動いている世界がこの薄汚い倉庫街を起点に繰り広げられているというのはロマンがありそのよく分からない価値観を認めるって豊かな世界をつくることへの第一歩のような気がするのだ。

そしてそんな世界に片足突っ込もうとしている自分を割と気に入っているのだった。



◆ ブルックリン、プロスペクトパークより

今回はマンハッタンではなく、ブルックリンのブラウンストーンの街並みが美しいプロスペクトパークという閑静な住宅街に滞在した。

夕刻、少し陽が陰っていき各家庭のリビングの明かりが灯り始めるとそれぞれの家の中の様子が通りを歩いているとうかがえるのだけれどほとんどの家庭のリビングに思い思いのアートが掛けてあるのだ。人物画もあれば抽象画もあり、鮮やかな色のアートからモノクロまで。アートの種類や大きさは多様だが共通して言えることは各家庭がそれぞれのセンスで暮らしに取り組んでいるのだなと感じられた。

そして自分を表現するツールとしてアートを上手く活用しているのだ。

それは見せびらかしたいとか、虚栄心とは違う、言葉では上手く言い表せないアートを通して自分を分かってほしいというもっと人間らしい動機が働いている気がするのだった。


写真はほんの一例。各家庭のセンスが垣間見え、微笑ましい気持ちになりませんか?

現在ニューヨークでは急速に進むインフレが家計へ大きな影響を与え、リセッションの時代に突入すると言われている。

そんな後ろ向きな時代こそ、家の中を自分らしくデコレイトしてどんなときでもポジティブに人生に取り組もうとしている様子が感じられ、アートはまるで守護神のように見守っている気がするのだった。

私にとってはアートフェアのどのブースよりも、チェルシーの名だたるギャラリーよりも、フィフスアベニューの高級ブランドショップのディスプレイよりもこのプロスペクトパークの窓越しに見える各家庭のアートデコレーションに一番心が動いた。

この景色に目指したいものがたくさん詰まっている気がしたのだった。

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